内科専門医の更新時期が近づいてくると、日々の診療に追われる中で「いったい費用はいくらかかるのか」「50単位をどうやって最短で集めればいいのか」と不安になる先生も多いのではないでしょうか。手続きが複雑に見える専門医制度ですが、実は要件を整理すると、最小限の時間とコストでクリアするための「効率的なルート」が存在します。
セルフトレーニング問題の費用や共通講習e-learningの活用法、さらには認定内科医や総合内科専門医との違いによる単位数の差など、知っておくべきポイントは多岐にわたります。この記事では、忙しい先生方が更新手続きで損をしないために、私が実践しているコスパ重視の更新戦略を余すところなくお伝えします。
【この記事でわかること】
- 更新にかかる費用の総額と内訳(固定費と変動費)
- 必須となるセルフトレーニング問題の重要性と落とし穴
- 50単位を最短・最安で取得する具体的な組み合わせパターン
- 期限切れや手続き不備などの致命的なミスを防ぐ方法

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まず結論:内科専門医の更新は「5年ごと」+“必須の型”がある
内科専門医の更新制度を理解する上で最も重要なのは、これが「単に単位を集めればいい」という単純な足し算の試験ではないということです。多くの先生方が誤解されているのですが、単位数が50を超えていても、特定の「必須要件」を満たしていなければ更新は認められません。まずは、更新の全体像となる「周期」と「3つの柱」について、しっかりと頭に入れておきましょう。
更新周期と認定期間の計算
内科専門医(機構認定)の更新は、原則として5年ごとに行われます。ただし、初回更新のタイミングには特例的な扱いがあるため注意が必要です。具体的には、初回の認定期間は認定日(通常は10月1日)から起算して「5年5か月」という少し長めの期間が設定されるケースが一般的です。これは、専門医制度の移行期における調整や、年度ごとの事務処理の都合によるものです。
「まだ5年経っていないから大丈夫」と高を括っていると、実は認定証に記載された有効期限が迫っていたり、あるいは逆に「もう期限切れだ」と焦っていたら実は数ヶ月の猶予があったりと、勘違いが起きやすいポイントでもあります。まずはご自身の手元にある認定証を確認し、正確な「有効期限(西暦・月・日)」をカレンダーやスマートフォンのリマインダーに登録することから始めましょう。この最初の確認作業こそが、無駄な焦りや期限切れのリスクを回避する第一歩です。
更新に必要な3つの要素(単位だけではない)
内科専門医の更新審査は、日本内科学会の規定により、以下の「3点セット」で行うと明記されています。これらはどれか一つでも欠けると更新不可能です。
- 勤務実態の自己申告
現在、医師として適切な医療機関に勤務し、内科診療に従事していることを申告します。これは書類上の手続きですが、留学中や休職中、あるいは内科以外の診療科に転科した場合などは、別途「更新延期」や「保留」の手続きが必要になる場合があります。 - 診療実績の証明(=セルフトレーニング問題の合格)
ここが旧制度と大きく異なる点であり、多くの先生が躓くポイントです。新制度の内科専門医では、具体的な症例レポートを提出する代わりに、学会が指定する「セルフトレーニング問題」に解答し、一定以上の正答率(原則60%以上)を得ることで「最新の標準治療を理解し、診療実績がある」とみなされます。つまり、試験に合格することが実質的な診療実績の証明となるわけです。 - 更新単位の取得(50単位以上)
5年間で合計50単位以上を取得する必要があります。ただし、この50単位の中には「必須講習」や「領域講習」といった細かい内訳(カテゴリー)が設定されており、ただ漫然と学会に参加しているだけでは要件を満たせない可能性があります。
このように、更新は「単位集め」だけでなく、「セルトレ合格」と「勤務申告」がセットになって初めて完了します。特にセルトレは実施時期が決まっているため、計画性が求められます。
(出典:日本内科学会『内科専門医の認定と更新』)
“確定費用”の全体像|コスパ検討の土台を知る
「更新にはいくらかかるのか?」という疑問に対して、明確な答えを持っている先生は少ないかもしれません。学会費とは別に徴収される更新費用は、決して安い金額ではありません。ここでは、必ず支払わなければならない「固定費」と、選択次第で節約可能な「変動費」に分けて、費用の全体像を可視化します。これにより、無駄な出費を抑えるための戦略が見えてきます。
A) 更新料と認定料(必ず発生する固定費)
まず、更新手続きそのものにかかる費用です。これは、どのような手段で単位を集めたとしても、最終的に必ず支払う必要がある「聖域」のようなコストです。内訳は以下の通りです。
【更新時の必須支払い額】
- 日本内科学会 更新料:5,000円(税込)
学会による一次審査にかかる事務手数料のようなものです。 - 日本専門医機構 認定料:11,000円(税込)
学会の審査通過後、専門医機構が最終的に認定証を発行するための費用です。 - 合計:16,000円
この合計16,000円は、更新申請のタイミング(5年に1度)で請求されます。クレジットカード決済やコンビニ支払いが可能ですが、忘れていると認定証が届かないため注意が必要です。多くの医療機関では、これらの更新料を経費として精算できる場合がありますので、領収書は必ず保存しておきましょう(Webシステムからダウンロードできるケースがほとんどです)。
B) セルフトレーニング問題(ほぼ必須のコスト)
次に、事実上の必須コストと言えるのが「セルフトレーニング問題」の受講料です。前述の通り、更新要件の「診療実績の証明」にはセルトレの合格が必須条件となっています。このセルトレには「Web版」と「マークシート版(冊子)」の2種類があり、どちらを選ぶかでコストが異なります。
| 種類 | 費用(税込目安) | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| Web版 | 2,000円 | 安い、即時採点、スマホで解答可 | 画面上での問題閲覧が必要 |
| マークシート版 | 3,500円 | 紙でじっくり読める | 高い、郵送の手間、結果判明に時間がかかる |
コスパを最優先するなら、間違いなく「Web版(2,000円)」一択です。 内容は全く同じですし、Web版なら通勤中や当直の空き時間にスマホでポチポチと解答を進めることができます。採点結果もすぐに分かるため、「マークシートを郵送したけど届いているか不安」といったストレスからも解放されます。
また、セルトレは「年1回の企画」である点に最大の注意が必要です。毎年所定の期間(例:6月〜8月頃申し込み)にエントリーし損ねると、その年度は受講できません。5年間のうち最低1回は合格しなければならないため、これを逃し続けると更新不能になります。「たかが2,000円の問題集」と侮らず、毎年の学会メールマガジンで募集開始の合図を見逃さないようにしてください。
C) 共通講習の追加コスト(e-learning活用)
3つ目のコスト要因は「共通講習」です。医療倫理、感染対策、医療安全の3分野は必須単位ですが、これらが勤務先の院内講習会などで無料で取得できていない場合、学会が提供する有料コンテンツを利用することになります。
日本内科学会の「専門医共通講習e-learning」は、1コンテンツあたり2,200円(税込)程度で提供されています。もし3分野すべてをe-learningで賄うと、6,600円の追加出費となります。
「高いな」と感じるかもしれませんが、ここでケチって遠方の無料講習会を探すのは、時間単価の高い医師にとっては逆効果です。現地に行く交通費や移動時間を考えれば、自宅で1時間程度で完結するe-learningに6,600円を払う方が、トータルのコストパフォーマンス(タイムパフォーマンス)は圧倒的に優れています。特に開業医の先生や、非常勤先が多くて院内講習の単位認定が複雑な先生には、この「課金による解決」を強くおすすめします。
「更新単位50単位」の内訳と必須セット
「とにかく50単位集めればいいんでしょ?」と思って、手当たり次第に学会に参加するのは最も効率の悪い方法です。内科専門医の更新単位には、厳格な「カテゴリー分け」と「必須単位数」が存在します。このパズルを理解せずに単位を集めると、「合計60単位あるのに、必須領域が足りなくて更新できない」という悲劇が起こります。
最低限そろえるべき「必須4点セット」
更新に必要な50単位は、以下の4つの箱を埋めるイメージで集めてください。これが「必須の型」です。
【更新単位の内訳と必須要件】
- ⅰ)診療実績の証明:10単位(必須)
これは前述の「セルフトレーニング問題(1回目)」の合格で自動的に付与されます。これだけで50単位のうちの20%が埋まります。 - ⅱ)専門医共通講習:3単位以上(必須)
「医療倫理」「感染対策」「医療安全」の3分野を各1単位ずつ、計3単位が最低ラインです。最大10単位までカウントできますが、必須の3つさえ取ればOKです。 - ⅲ)内科領域講習:20単位以上(必須)
ここが最大の山場です。内科学会の年次講演会や、各地方会、認定された研究会への参加などで取得します。最低20単位が必要ですが、ここをどう効率よく稼ぐかが鍵になります。 - ⅳ)学術業績・診療以外の活動実績:2単位以上(必須)
「学術業績」と聞くと論文執筆などをイメージするかもしれませんが、多くの場合は「日本内科学会総会・講演会」や「地方会」への“出席”だけで2単位が付与されます。つまり、一度でも総会に参加(Web参加含む)すればクリアできる項目です。
これらを合計すると、最低でも「10 + 3 + 20 + 2 = 35単位」は、必須要件を満たす過程で自然と集まります。残りの15単位をどう埋めるか。ここで「領域講習」を多めに取るか、他の学会参加で埋めるかの戦略が問われます。
領域講習20単位の賢い積み方
必須枠の中で最も単位数が多い「内科領域講習(20単位)」をどうクリアするか。ここでおすすめなのが、「セルフトレーニング問題の2回目以降」の活用です。
実は、セルフトレーニング問題は、1回目の合格は「診療実績(10単位)」になりますが、2回目以降(別の年度のもの)に合格すると、それは「領域講習(10単位)」としてカウントされる規定があります(※年度や規定変更により扱いが変わる可能性があるため、必ず最新のハンドブックを確認してください)。
もしこれが適用されるなら、Web版セルトレ(2,000円)をもう1年分やるだけで、領域講習の半分(10単位)が一気に埋まります。わざわざ高い参加費を払って講演会に行き、長時間拘束されるよりも、はるかに安上がりで効率的です。
また、日本内科学会の「生涯教育講演会オンデマンド問題」も狙い目です。これは講演動画を視聴して問題に答える形式で、正答率60%以上で数単位(例:5単位)が取得できます。自宅で完結するため、これもコスパの良い手段と言えます。
「コスパがいい」取り方の具体的戦略
ここまでの情報を統合し、私が推奨する「最もお金と時間をかけない更新戦略」を具体的に提示します。このルートを辿れば、迷うことなく最短距離で更新要件を満たすことができるはずです。
コスパ最強ルート:セルトレとオンデマンドの活用
以下のステップで進めるのが、現時点で最もコストパフォーマンスが高いと考えられます。
【ステップ1:ベースを作る】
- セルフトレーニング問題(Web版)に1回合格する
→ 費用:2,000円
→ 獲得:診療実績10単位(必須クリア)
【ステップ2:領域講習を稼ぐ】
- セルフトレーニング問題(Web版)をもう1回(別年度)合格する
→ 費用:2,000円
→ 獲得:領域講習10単位 - 生涯教育講演会オンデマンド問題(Web)を2回分クリアする
→ 費用:数千円(会員区分による)
→ 獲得:領域講習10単位(5単位×2)
これで領域講習20単位(必須)が完了します。
【ステップ3:共通講習と出席単位を埋める】
- 共通講習e-learning(3分野)を受講
→ 費用:6,600円(2,200円×3)
→ 獲得:共通講習3単位(必須クリア) - 日本内科学会総会にWeb参加(1回)
→ 費用:参加費(15,000円程度〜)
→ 獲得:学術業績2単位(必須クリア)+参加単位
このルートなら、総会参加以外はすべて自宅のPCやスマホで完結します。移動時間ゼロ、宿泊費ゼロです。総会参加もWeb開催があれば現地に行く必要はありません。合計費用も、更新料を除けば数万円以内に収まり、5年間で分散して支払うため負担感も少ないでしょう。
コスパを悪化させる典型的な失敗パターン
逆に、以下のような行動は「コスパ最悪」となるため避けるべきです。
- セルフトレーニング問題を買い忘れる
これが最大の失敗です。セルトレを逃すと、代替手段として高額な講習会に参加して「診療実績」を証明しなければならなくなる可能性があり、手間も費用も跳ね上がります。 - オンデマンド問題の重複受講
「過去に現地参加した講演会」と同じ内容のオンデマンド問題を受講しても、単位が重複して認められないケースがあります(「同一企画の重複不可」の原則)。せっかくお金を払って問題を解いたのに、単位がゼロになるのは痛恨の極みです。必ず受講履歴を確認してから申し込みましょう。 - 過剰な単位取得
「心配だから70単位くらい取っておこう」という気持ちは分かりますが、更新に必要なのは50単位だけです。余った単位は次回の更新に繰り越せません(切り捨て)。55単位くらいを安全圏として、それ以上は無理にお金を使わないのが賢明です。
総合内科専門医・認定内科医との違い(混同注意)
インターネットで更新情報を検索していると、よく「総合内科専門医」や「認定内科医」の情報が混ざって出てきます。これらの資格は更新要件が全く異なるため、混同すると大変なことになります。
| 資格名 | 更新に必要な単位数 | 主な特徴・難易度 |
|---|---|---|
| 内科専門医(機構認定) | 50単位 | 今回解説している資格。比較的維持しやすい。セルトレWeb版が鍵。 |
| 認定内科医(学会認定) | 25単位 | 最も基本的。更新料5,000円。ハードルは低い。 |
| 総合内科専門医(学会認定) | 75単位 | 最難関。認定内科医25単位+総合内科専門医50単位の合算が必要。さらに「内科学会主催企画で50単位以上」という厳しい縛りがある。 |
特に注意が必要なのは、「総合内科専門医」を持っている先生です。この場合、内科専門医(機構)の50単位だけでなく、さらに上乗せで単位が必要になり、しかもその多くを「内科学会主催の企画」で取らなければなりません。「内科専門医の更新記事を読んで50単位でいいと思っていたら、実は総合内科専門医の更新には75単位必要で足りなかった」という事態にならないよう、ご自身の保有資格を再度確認してください。
内科専門医の更新と業務効率化
最後に、更新手続きそのものではなく、それに関連する業務負担をどう減らすかについて触れておきます。専門医を維持するためには、更新手続きだけでなく、日々の診療や後進の指導(J-OSLERなど)もセットでついて回ります。これらを効率化してこそ、真の「コスパ」が実現します。
J-OSLER指導の負担を減らす
内科専門医を取得されている先生の多くは、専攻医の指導医としてJ-OSLERの評価や病歴要約の添削に関わっていることでしょう。この指導業務は非常に時間がかかり、ご自身の更新単位を取得する時間を圧迫する要因にもなります。
特に病歴要約の添削は、一度突き返すと何度も修正のやり取りが発生し、お互いに疲弊してしまいます。これを防ぐには、「最初から完成度の高い要約を書かせる」あるいは「効率的に添削する」ためのツール活用が不可欠です。
病歴要約作成を支援するツールの活用
最近では、J-OSLERの病歴要約作成を支援するWebサービスや、AIを活用した記述サポートツールが登場しています。例えば、当ブログでも紹介している「J-OSLER病歴要約の書き方ガイド」や「病歴要約アシストツール」などを専攻医に紹介することで、彼らの自律的な作成を促し、指導医の手直し負担を大幅に減らすことができます。

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また、「専門医試験の効率的な勉強法」に関する記事も、これから試験を受ける専攻医へのアドバイスとして役立つはずです。指導にかかる時間を圧縮し、浮いた時間をご自身の更新単位取得や、リフレッシュの時間に充ててください。
まとめ:戦略的な更新で医師人生のコスパを高める
内科専門医の更新は、5年に1度の避けて通れないイベントです。しかし、仕組みさえ理解してしまえば、最小限の費用と労力でクリアできる「ゲーム」でもあります。
- 「16,000円」の固定費と「Web版セルトレ」の活用
- 「必須4点セット」を意識した単位取得
- 「セルトレ2回目」や「e-learning」による時短テクニック
- 資格喪失を防ぐための「期限管理」
これらを実践することで、更新にかかるストレスをゼロに近づけられます。ぜひ今回の記事を参考に、スマートな更新手続きを実現してください。そして、確保できた貴重な時間を、目の前の患者さんのため、あるいはご自身の人生のために有効に使っていただければ幸いです。
【免責事項】
本記事は執筆時点(2026年1月)の情報に基づいています。専門医制度は頻繁に細則が変更されるため、最終的な手続きや単位数の確認は、必ず日本内科学会の公式サイトおよび最新の「更新に関する手引き」をご自身でご確認ください。

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